主な外傷症状について

捻挫

捻挫の治療の基本方針

捻挫の治療の基本方針は、捻挫を起こした強制肢位を取らせないような肢位に固定することである。
その肢位を取ることのみを制限し、その他の運動についてはできるだけ可能な状態にすることが望ましい。

捻挫の治療のポイント

捻挫の治療のポイントは、関節内外の出血をできるだけ少なくして、血腫の形成を最小限に止めることと、断裂した関節包・靭帯などの軟部組織を正常に修復させることである。

捻挫の治療の方法

  1. 関節の安静と固定
    捻挫を起こした強制肢位を取らせないような肢位に固定する。
  2. 消炎と吸収の促進
    冷湿布と圧迫包帯を施す。冷湿布は出血防止・炎症除去(2~3日したら新陳代謝促進のため冷罨法に変える)を図るため、圧迫包帯は滲出物の吸収を図るためである。
  3. 関節周囲組織の強化
    マッサージ・自動運動などを開始させる。マッサージは初めは軽く行い、自動運動は筋力の増強と関節拘縮の除去を目的として行う。

挫傷

挫傷の特徴

下腿部の挫傷は下腿三頭筋に多いが、足部の外転・回内運動を行う腓骨筋群、内転・回外運動を行う脛骨筋群にもしばしば見られる。

挫傷の症状

受傷と同時に激痛があるが、やがて鈍痛となる。運動痛のため、受傷直後は患肢の使用困難であるが、しばらくして静かな歩行は可能となる。また、皮下出血があるが、腫脹は表面に現れにくい。皮膚に暗赤色の着色をみることがあるが、これは損傷部位により下部に移っていく。

足底腱膜炎

足底腱膜炎はしばしば臥床による安静の後にみられる。また、長軸アーチが平低過した回内足の人によくおこり、特に男性に多い。過度の起立や歩行を必要とする職業の人(特にそのような活動にそれまで慣れていなかった場合)に足底腱鞘炎となり、その踵骨付着部に疼痛がおこる。

肉離れ

肉離れの特徴

下腿部の肉離れは腓腹筋に多くみられるが、ヒラメ筋にもおこることがある。
腓腹筋・ヒラメ筋は下腿三頭筋として足関節を底屈し、足が床に固定されると下腿部と足を後方に引いてバランスを維持し、前足部が床に固定されるときは距骨下関節で強い回外力を持つなどの作用をするが、腓腹筋が強力である、損傷も多い。

肉離れの発生機転

陸上競技などでスタートダッシュや全力疾走する際、突然筋肉の一部を強く引っ張るような激痛が走り、そのために疾走や跳躍ができなくなったり競技能力が著しく低下する。
陸上の短距離競走時におこることが圧倒的に多く、ハードル走・中距離競走でもみられ、ラグビー・サッカーなどランニングを主とした競技中にも多く発生する。

肉離れの発生要因

発生要因として、筋肉の疲労や寒冷があり、走路不良などが誘因となって瞬間的な筋活動要求量に筋収縮が対応できずに筋膜・筋健移行部の筋線維が損傷され、部分断裂をすることもある。

肉離れの症状

筋の損傷部位に限局した圧痛と軽度の腫脹・皮下出血があり、時には硬結を触知できる。
歩行や走行など、損傷した筋を自動収縮させるような運動を行わせると、疼痛のため運動が制限され、抵抗を加えると疼痛が増強する。また、他動的に筋を伸展させると、損傷した部位に痛みを生ずる。

打撲

打撲の症状

受傷と同時に激痛があり、患肢で立つことができないほどであるが、やがて鈍痛となり、静かな歩行が可能となる。
皮下出血があり、特に脛骨骨膜挫傷を伴うものは著しく腫脹が現れる。受傷部位皮膚に発赤をみるが、これは漸次暗赤色→暗赤紫色→紫色となり、受傷部位より下部に着色が移る。

打撲の特徴

下肢は体重支持と歩行機能を持つために外傷を受けやすい。なかでも下肢は末梢部に位置しているため受傷しやすく、下肢のどの部分にも打撲傷を受けるが、特に歩行の際、大腿に対する下肢の振子様伸展によって遊脚肢の推進が行われるなどの関係で、下肢前面中央部に打撲傷を受けやすい。しかもこの部位は軟部組織が少なく、ただちに脛骨に及んで激痛があるので、俗に痛さの表現として「向う脛をける」とも言われている。